2009年05月24日

メリケンパークララバイ vol.9

メリケンパークララバイ vol.9


GTRは再び走り出した。


ヒトミは、迷いを断ち切るように力を込めてアクセルペダルを踏んだ。

バックミラーに映るボブの姿が、あっという間に消えた。



どうして?とヒトミは思った。

どうしてこんなに寂しいのかな?

まだ、新しい人生に向かってスタートしたばかりなのに。

すべてをリセットしたばかりなのに。

私、どうかしてるのかも。

きっとそうだわ、どうかしてるのよ。



まぶしく輝くベイエリアを、GTRは走り続けた。

鏡のような滑らかなボディに、通り過ぎるすべてのイメージを映して。


  


2009年05月24日

メリケンパークララバイ vol.8

メリケンパークララバイ vol.8







ボブの筋肉でできた岩のような身体を、
ヒトミはもう少し抱いていたかったが、

それはやはり危険なことかもしれなかった。

いつでもそれは女にとって危険なことだが、今は特にデンジャラスな気がした。

彼女の人生のなかでも、5本の指に入るくらい危険な感じだ。

1本目は・・・、いや、時間がないので後で思い出してみよう。

これだけは、時間がかかりそうだ。



「今はお仕事中?」と軽くボブの腰に手を置いたままヒトミは聞いた。

「まあね、一人逃げられてしまったが、どうせ遠くには行けないだろう。じゃあ、また逢えるといいね」

「じゃあ、またね。あなたと別れるのは寂しいけど、」